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仕事を進める「公」の価値

ビジネスエンジニアリング本部

Yui Taira

法学研究科 2014年入社

進まないプロジェクトを進める

大手通信会社の改革チームで仕事を始めて2年になります。
現在は、組織力強化を目的とした「部門間連携ネットワーク刷新プロジェクト」の推進チームで中心的立場に立ち、企画、営業、技術、セキュリティ…といった8つのチームをまとめ、プロジェクトをリードしています。

プロジェクト序盤のことですが、顧客企業の「仕事が進まない」組織状態が次々と顕わになりました。
例えば、プロジェクトの大きな方向性を全チームで認識していても、具体的に仕事の内容・期限を決定する段階になると、各チームからそれぞれに「うちのチームは期限を延ばしたい」「事情があってこの内容には対応できない」という声が殺到します。「総論賛成・各論反対」です。
背景には、各チームがそれぞれに抱えている事情(例:プロジェクトの仕事を行うことによる他業務への影響、メンバーの力量…)があります。プロジェクト全体の仕事よりも自チームの事情が優先され、仕事が進まなくなっていきます。

このプロジェクトを前に進める牽引役として着任しましたが、詳細な状況を聞けば聞くほど、悩みました。
このプロジェクトは顧客企業にとって「新しい組織連携のあり方」をつくる重要な契機です。
プロジェクトを構成するチームが協働して仕事に向かう必要があります。しかし、チームの個別事情はなくなりません。
どうすれば仕事が進むのか? どう進めるべきか?

組織の「私」的意識と戦う

実際にプロジェクトを推進する上で意識したのは、常に仕事を真っ直ぐ進めるあり方をすることでした。
「出てきた情報は資源としてフラットに取り扱う」「どのチームにも公正に接する」「仕事を進める意志を明確に発信する」…。
例えば、あるチームから特別対応を求める声が出た時には、状況を把握しながらも、個別事情に引きずられることのないように、プロジェクト全体の視点から発信することを心がけました。その一方で、各チームから出てきた情報は全て受け止め、返答しました。
対応する時の態度も大切だったと思います。どのチームの担当者に対しても明快に他意なく、また曖昧なままにすることのないように一つ一つ明確にして話すよう努めました。

これらを実行したのは、各チームの「自部門意識」が仕事を進まなくしていると捉えたからです。
プロジェクトの決定事項よりも自チームの事情を優先させる「自」部門意識は「私」部門意識です。組織内に蔓延する「私」的意識が仕事を停滞させ、結局のところ個々のチームの仕事が進まなくなる悪循環を招きます。
プロジェクトを進めるために組織内の「私」と戦わなければならない、と強く思いました。
私は、子供の頃から様々な場面での経験を通して「皆で何かを行う時に『私』的なものが混じると絶対にうまくいかない」と感じていました。この感覚が基になり、オースビーに入社して以来の研修や実務の中で、組織を動かすために当然すべきあり方が身に染み込み、顧客現場での意識・動きに繋がっています。

顧客の変化が仕事を進める

とにかくプロジェクトを進めるために必死でしたが、しばらく経った頃、顧客が少しずつ変化され始めたのを感じました。
最初に感じたのは、組織の場に惜しみなく情報が出てくるようになってきたことです。当初は各チームの中で留まっていた情報が、プロジェクト推進チームに共有されるようになりました。
出た情報を全て取り扱って仕事を進めるための資源とする姿勢が伝わり、プロジェクトのために情報を共有する意識が組織内に生まれてきたのだと思います。

ある日の会議中、重要で緊急性が高い仕事に急遽対応する必要があることが分かったことがあります。
全チームが仕事を複数抱えていて余裕のない状況下でしたが、あるチームの担当者が「うちのチームでやります」と即答されました。この担当者は長い間、様々な事情を主張してプロジェクトの仕事に消極的な姿勢を続けていた方でした。
その時の担当者の表情が大変すっきりとされていたことが強く印象に残っています。
組織の中で一人の社員が、「私」的な自チーム意識を超えてプロジェクトの仕事に真っ直ぐ向かわれた瞬間でした。

チームや担当者の変化と共に、仕事の進み方も変わってきました。
顧客の管理職からは「オースビーが出席する会議は、雰囲気が引き締まるし、清々しく前に進む」と言われましたが、組織における人のあり方が仕事を進めていることを感じ取っておられることの表れです。
プロジェクトは継続していますが、組織の状態はまだ改善の余地がある、というよりも理想に向かうスタートラインに立ったところです。

「公」で組織をリードする

人は心の底に「組織を大切にして組織のために動こうとする思い」を持っていて、その思いを発揮したいのだと思います。
普段は「私」的意識に流され易い人でも、組織のために動くあり方を眼前に示されると、心の底で眠っていた思いが共鳴し、本人さえも驚くほどの熱意とエネルギーで、全体に資する方向に動き始めます。
こう思うのは、私自身にも「私」的意識があり、それを乗り越えて組織のために動く清々しさや、仕事を前に進める手応えを何度も感じてきたからです。

自分の中に「私」があるからこそ、仕事を進める「公」を持ちたいと思います。
「公」とは、自ら拠って立つ基盤に向けられる知性です。組織を真に思い、全体に資するあり方を真っ直ぐに実行する知性のある人に、人はついてきます。
自分の「公」を磨いて組織をリードし、企業やそれを包括する社会に人々の「組織への思い」「仕事へのエネルギー」を溢れさせることが、これからの私の仕事です。

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